研究活動

研究概要

FIBERでは、生命・健康・環境・材料の4領域を束ねて“人”を科学することを研究テーマに掲げ、科学的・社会的に価値のある研究成果を得ることを目標に活動しています。主たる研究対象はDNAやRNAといった核酸です。細胞の中で遺伝情報を保持するDNAは、通常二重らせん構造をとっています。しかし、DNAの周囲の分子環境が変化すると、二重らせん以外の非標準構造が局所的、かつ一時的に生じることが近年わかってきました。このようなDNAの“かたち”の変化は、DNAの遺伝情報から作られるRNA、さらにはRNAから作られるタンパク質に影響を与えて、結果的にがんなどの後天的疾患が起こる要因となる可能性があります。FIBERでは、そのような核酸の非標準構造をターゲットに、細胞の機能を化学的に制御する基礎研究と新たな病気の治療法開発などの応用研究を推進しています。具体的には、化学環境変化に対する細胞の応答を、核酸の非標準構造に焦点を当て、分子レベルでの化学反応機構に基づいて定量的に解析(データベース化)します。同時に、合成分子などの「化学」ツールを用いて細胞内の核酸構造を制御する技術基盤を構築し、細胞応答の制御分子として適用します。これにより、疾患に関連する核酸の非標準構造を、疾患発症に至る前に制する「先制核酸医工学」という新たな医工連携分野の開拓を目指します。得られる研究成果は、従来の核酸の塩基配列と二重らせん構造を基本とする遺伝子工学に加え、核酸の非標準構造を標的とする、社会的希求が極めて高い新しい医工学技術への展開が期待されます。